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青い瞳のレクイエム#01.1『プロローグ・夜の訪問者』

ARIAの二次創作小説(続き物)です。
主人公はオリジナルキャラクターですので、その点をご留意くださいませ。

――*――――*――――*――――*――――*――――*――――*――

 小さな常夜灯が淡く照らす薄暗い屋根裏部屋に、安らかな二つの寝息が静かに重なっていた。

 カーテンのない小さな窓から星明りが優しく降り注ぐベッドの上に、可愛い猫耳のついたナイトキャップをかぶって眠る少女が一人。そして彼女の足元には、一緒の毛布にもぐりこんでいるずんぐりむっくりとした白い猫が一匹。少女と猫は、ハーモニーを奏でるように静かな寝息をたてあい、お互いにすてきな夢の中のようである。
 屋根裏を部屋として使えるようにと造られたからか、天井も屋根の形と同じ逆Vの字になっている。眠る少女の真上辺りには、換気用だろうか、レンズのように外に膨らんだまるい窓が二つあり、この窓が星々の輝きを薄暗い部屋の中にまで導いていた。

「……ぅん…」

 今日は星明かりが少しまぶしかったのか、少女が夢の世界から引き戻されたようだ。
 まだ朝には時間が早い。窓からのぞく、夜空に輝く星たちの勢いは衰えてすらいない。それくらいに今の夜空は、朝焼けには程遠いようだった。

 いつものように少女の毛布に包まっていた猫も目が覚めたようで、器用に前足で目をこすりながら少女のもとに近づき、少女もまた、その眠た目の猫を慰めるようにそっと頭を撫で始める。
 しかし、その猫の様子がどうもおかしい。
 いつもなら、少女が撫でてやれば、それに答えるようにその猫も甘えてくるのだが、今はどうしたことか、ベッド脇の小物棚の向こう側――常夜灯と、小物棚に置かれた電子時計の薄明かりに照らされた部屋の隅――をじっと見つめているのだ。
「どうしたんですかぁ、アリア社長?」
 そう問いかける少女が手を伸ばし、毛布を肩まで引き上げる。
「うぅぅ、今日は妙に冷えますねぇ…」
 毛布に包めた身体をブルブルっと震わせ、暖を求めるようにふくよかな猫を抱き上げ、自分と同じように毛布に包めて、
「ふふっ、あったかいです」
 そう言って、抱いた猫をまた撫でようとするが、猫は少女の方を見返っては、また部屋の隅へと顔を戻すのである。
 そんな膝の上の猫に首をかしげながら、少女は指の背で眠た目をこする。
 そして、ふと時間も気になったのだろう、おもむろに小物棚で薄明かりを放つ時計に目をやった。

 その時だった――


「……誰?」


 少女の目は時計ではなく、胸元の猫が先ほどから見つめ続けている場所――薄暗い部屋の隅――に釘付けになったのである。
「……あ、アリシアさん?」
 見つめる先は、この屋根裏部屋へと上がる階段もそばだ。だからか、この建物を一緒に使っている知人が用事か何かでやってきたと思ったのかもしれない。

 が……

 知人の名前で呼びかけるも、常夜灯の小さな明かりに照らされる薄暗いその場所には誰も見当たらない。
 しかし、腕の中の白い猫は、この今もまた「ほら」と言わんばかりに、少女の顔を見てはまたすっと向き直るのだ。

 きょとんとしていた少女の顔にだんだんと焦りの色が加わり、そして恐怖の色へと染まっていく。
「……誰? 誰かいるの!?」
 少女がそう呼びかけたとき、夜空ののぞくまるい窓からほんの一瞬だけ、何かしらの強い明かりが差し込んだ。そしてその明かりがほんの一瞬だけ、少女の視線の先を明るく照らす。


 そのとき、少女には何が見えたのだろうか。あるいは何も見えなかったのか。
 少女は、まるで怖がりの子供が怪談話をされて逃げこむように毛布を頭からかぶり、その夜は朝まで顔を出すことはなかったのである。





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