«

みどりの黒髪・晃さん
| トップページ | ステキな »

青い瞳のレクイエム#04.1『その ステキなお客様との出会いは…(1)』

ARIAの二次創作小説(続き物)です。
主人公はオリジナルキャラクターですので、その点をご留意くださいませ。

――*――――*――――*――――*――――*――――*――――*――

 道に迷っていたという青年の目的地を聞いて、ゴンドラの少女は、
「すごい、びっくり! 私、そのARIAカンパニーに勤めてるんです!」
 と、跳び上がらんばかりに大喜びだ。
 穏とトレニアも、人に道を尋ねる気さえあればいずれいい誰かに突き当たるだろうとは思っていても、まさかこれから向かう先の関係者に巡り会うなどとは思ってもいなかったのだろう。少女のセリフにきょとんとした顔を思わず見合わせ、二人して「ウソ」とつぶやいていた。
 そんな二人に「ちょっと待ってくださいねっ」そう言いながら、少女は穏とトレニアのいるアーチ橋を中腰にくぐり、そばの小さな舟着場へとオールに力を込める。穏とトレニアもそんな少女を追うように、荷物を手に取っていそいそとアーチ橋を下りるのだった。

「はじめまして! 私は水無灯里(みずなしあかり)です。ARIAカンパニーでウンディーネの修行をしているんです!」
 穏とトレニアの見守る中、手際良く横付けしたゴンドラから跳ぶようにして降りたせいで勢いあまって二人に突っ込みそうになり、少女は照れ笑いをしながらも、明るさいっぱいで自己紹介である。
 彼女の自己紹介のとおり、ゴンドラでやってきた少女の名前は水無灯里。水上都市とも形容されるこのネオ・ヴェネツィアには、ゴンドラを使って観光案内をする水先案内業の会社がいくつかあるのだが、彼女はそのうちの一社『ARIAカンパニー』に勤める半人前ウンディーネ(水先案内人)だ。
 そして、『猫様』から教会へと届けられた手紙にはARIAカンパニーのことが触れられており、穏が文面にあった番号へと確認の電話をかけたとき、彼に改めて来社を頼んだのもARIAカンパニーなのである。
 今朝のその電話のときは、電話口の穏にも相手様は時間の余裕がないように聞こえて――などと言うとトレニアが『言い訳』と怒りそうだが――詳しい話はARIAカンパニーに到着後ということになっていた。
 ほとんど何も分からないという状況での出発に加え、足がパンパンになったここ数時間の残念な惨状も手伝ったに違いない。彼にとっては苦笑いが多かった今日の一日だが、今は満面の笑みがこぼれんばかりである。そして灯里の自己紹介が終わるや否や、
「こちらこそ、はじめまして! 俺は水谷原穏。こっちはトレニア。よろしく! そっかぁ、君がARIAカンパニーの人かぁ…。誰かに道を聞こうと思っていたけど、まさかARIAカンパニーの人に出くわすなんて思いもしなかったよ!」
 と、彼女に負けずおおはしゃぎだ。
「灯里さん、私はトレニアです。よろしくね」
 トレニアもそう嬉しそうに自己紹介をすれば、笑顔の二人に灯里もますます嬉しそうになって、
「はひ♪ よろしくお願いします!」
 彼女も微笑み返し、もう一度ペコリとお辞儀を返すのだった。


 と、次の瞬間…!


「かわいいーーー♪」
「おぉ!?」
 そばから上がった突然の黄色い歓声に、穏が思わずすっとんきょうな声を上げた。
 彼が、何事かと声の主へ振り向けば、トレニアがしゃがみ込んで、なにやら灯里の足元を食い入るように見つめているではないか!
 今まで聞いたこともないトレニアの黄色い声に、穏はあっけにとられて目が点だ。そんな目で灯里の足元を見れば、どうやらトレニアは、灯里の足元にちょこんと座っている一匹の白い小動物が気になって仕方がないようである。
 もう『中』の域に達してしまいそうなほどふくよかなその小動物は、灯里と同じデザインの帽子をかぶり、彼女の胸のリボンと同じリボンで首もとを飾って、まるで芸能人がファンに答えるかのように、興味津々のトレニアに前足を振ってみせていた。
 そんな風にして戯れる客人と小動物に、灯里は「ふふっ」と口に手をあてる。
「トレニアさん、そちらはARIAカンパニーの社長のアリア社長です」
「え? この猫が社長なの!?」
 まさかこの動物がARIAカンパニーの社長だなど、微塵も思っていなかったに違いない。驚いて目をまるくするトレニアだったが、灯里は「はひ!」とうなづいて楽しげだ。
「そうなんだぁ…! はじめまして、アリア社長。トレニアです」
 微笑んでうなづいた灯里に、トレニアも楽しそうに、ARIAカンパニーの社長に改めて自己紹介を始めたのだったが、そんな楽しげな二人の横でなにやら難しい顔の青年が一人。

(猫、なのか? この白いの…)

 二人の話を聞く限り、この恰幅のいい小動物は猫であり、この猫がARIAカンパニーの社長で間違いないようだが…
 それにしても穏が思うのは、猫が社長を務めているということがどうとかいうことではない。一言も灯里は『猫』と言っていないのに、トレニアが分かりきったように、猫を連想するには少々サイズの大き過ぎるこの小動物を、迷わず、猫と断言したことであった。





#03.4『小道と水路の交わるところで』≪≪
   ≫≫#04.2『その ステキなお客様との出会いは…(2)』

|

«

みどりの黒髪・晃さん
| トップページ | ステキな »