青い瞳のレクイエム#04.2『その ステキなお客様との出会いは…(2)』
ARIAの二次創作小説(続き物)です。
主人公はオリジナルキャラクターですので、その点をご留意くださいませ。
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猫にしてARIAカンパニーの社長であるアリア社長は、トレニアに可愛いと褒められていたくご満悦の様子だ。白くもっちりとしたおなかをフリフリ揺らしつつ、くるっと回ったり、踊るようにステップを踏んでみせれば、観客のトレニアがキャーキャーと大喜びしないはずがない。そして彼女が、隣の青年が自分のはしゃぎっぷりに目を点にしていることなど、気がつくわけもない。
そんなトレニアに、灯里も嬉しそうに微笑んで、交じるようにひょいと隣にしゃがみ込んだ。
「水先案内会社では、アクアマリン色の目をした猫を社長にする風習があるそうなんです。水先案内会社はARIAカンパニー以外にもあるんですけど、どの会社でもアクアマリンの目を持った猫さんが社長なんですよ!」
確かに、アリア社長の大きくてつぶらな瞳も、よく見れば澄んだ海のようにきれいなアクアマリン色だ。
「へぇ、そうなんだぁ…! ふふっ! アリア社長、すごく可愛いですよ!」
そう言って、一通りのダンス種目を披露し終えて胸を張るアリア社長を祝福するように抱き上げたトレニアだったが…
「ぁ……」
身近な知人の意外な一面を見ましたよと言わんばかりに口元でニヤリと笑う穏にやっと気がついたようで、しまった、と引きつる小麦色の頬がみるみる真っ赤に染まっていく。
「な、なんですか? 私が猫を可愛がったらいけませんか!?」
アリア社長を抱いたまま、トレニアがニヤける穏に食ってかかる。しかし、動物を可愛がる彼女の姿など初めて見る彼には、胸に猫を抱きかかえる今のトレニアすら新鮮な光景のようだ。彼女にかみつかれればたいてい苦笑いで一歩身を引く彼なのに、今回はちょっとだけ悪戯っぽく含み笑いをして、
「んーん、いけないなってことはないよ。ねぇ?」
と、灯里に振り向けば、
「はひっ♪ いけないなんてことは全然ないですよぉ!」
と、灯里も楽しそうに同意するものだから、彼女の手前もあってか、トレニアはそれ以上穏に突っかかることもできない。右に左に二人を見ながら「ぁ…、ぅ…」と口をモゴモゴさせると、胸のアリア社長を視線の盾にするかのように、顔の前へと抱え上げた。しかし、抵抗しているようでなんとも可愛らしい彼女のそんなリアクションは、今の穏と灯里には火に油を注ぐようなものである。見事に、余計に二人の笑いを誘ってしまったトレニアは、何ごとかと首をかしげるアリア社長の向こう側で、きっと、小麦色の肌を熟れたトマトのように真っ赤に染め上げているに違いない。
「さてさて、ARIAカンパニーにご用事ということですし、私がゴンドラでご案内しますね!」
ひとしきり笑った灯里が、足もとにあったトレニアの荷物を「よいしょ」と持ち上げた。
「…いいの? お世話になっちゃって」
顔の前に抱え上げ、盾にしていたアリア社長の後ろから、トレニアがまだ赤らんだままの顔をちらりとのぞかせた。
そんなトレニアに、灯里がくすりと笑みをこぼす。
「はひ! 私自身はまだ半人前なので、私のお客様としてはお乗せできないんですけど…。でも、穏さんもトレニアさんもARIAカンパニーにご用事ということなので大丈夫です!」
その言葉の最後に灯里が「たぶん…」とつぶやいたのだが、穏はとりあえず聞こえなかったことにしたようだった。
ゴンドラに片足をかけ、トレニアの荷物を積み込んだ灯里が、次は穏の荷物をと彼に振り向いた。
「そういえば、ARIAカンパニーにはどんなご用事ですか? 私じゃないみたいですから、アリシアさんのお知り合いかな」
彼の手荷物を受け取りながら、談笑を途切れさせまいといった感じに灯里が口を開く。
穏も、目の前の少女が依頼先の関係者であることを思い出したようで、彼女にこくりとうなずいた。
「知り合いではないけど、そのアリシアさんからお呼ばれしてるんだ」
「…えっ?」
ふと、何か嫌な考えでもよぎったように灯里の笑顔が少しだけ引きつったのだが、穏はまったく気づく様子もない。
「アリシアさんを知ってるなら、灯里さんは何か聞かされてない? たとえば、そうだな…、『会社の誰かがちょっと怖がりで、ここ最近、よく眠れなくて困ってる』みたいな話」
今のところ、彼が今回の依頼で知らされていることといえばは、手紙にあった『恐怖に夜も眠れない少女がいる』と、電話に出た女性が話していた『社員の子が夜に人影のようなものを見て怖がっている』という、似通った内容の二点だけだった。それ以上の詳しい話はARIAカンパニーに着いてから、ということになっていたわけで、穏は、とりあえず灯里がそういう話を同僚の誰かからでも聞いていないか、と、ただそんなつもりで話してみたつもりだったのだが…
問いかけた穏の目に飛び込んできたのは、彼が予想だにしない、悪魔でも見て凍りついたように固まってしまった、恐怖の色に変わり果てた灯里の顔だったのである。
「……あの、えっと……、それじゃあ、アリシアさんが言ってた『教会のエクソシストさん』って……」
「えーと、うん。俺達のことだと思うよ」
「ええぇぇぇええ!!?」
積み込もうとしていた穏のバッグを胸に抱きしめ、灯里は、口を大にショックの悲鳴を上げたのだった。
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