青い瞳のレクイエム#04.3『その 突然の宣告ってば…』
ARIAの二次創作小説(続き物)です。
主人公はオリジナルキャラクターですので、その点をご留意くださいませ。
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「…それじゃあ、『恐怖に夜も眠れない少女』って灯里さんのことだったんだ」
「はぃ……ARIAカンパニーは、私とアリシアさん、あと、アリア社長の三人だけの会社ですし」
ほんの十数秒前と打って変わって、落ち込んだように暗くなった二人の声が、だいぶ薄暗くなった水路の奥へと吸い込まれていった。
日も先ほどよりだいぶ傾いてきているのだろう。だから、周囲を建物に囲まれたこの舟着場はさらに暗い。そばの橋にも灯がともって辺りを明るく照らしてはいるが、その明るさが余計に、迫り来る宵闇の足音を強く響かせていた。
留められたゴンドラと岸辺の間の細い水面に、穏と灯里とトレニア、三人の顔が映って並んでいる。その顔は波に揺られてゆがんでいるが、それでも表情の暗さが見てとれるくらいに、灯里はがくりと肩を落としていた。
思いがけずして出会ったARIAカンパニーへの客人が、今朝、アリシアが言っていた教会のエクソシストであるなど、彼女は夢にも思っていなかったに違いない。
同じARIAカンパニーのウンディーネであるアリシアは、人としてもウンディーネとしても尊敬する人物だったし、とても大好きな、たった一人の先輩でもあった。これまでにアリシアと過ごしてきた日々は、ゴンドラの練習にしても休日の語らいにしても、とてもためになるものだったし、練習などは大変なこともあったが、何よりすべてが楽しくてたまらなかった。
しかし、今回の『エクソシスト』のことだけは別だった。
もちろん、アリシアが自分を嫌がらせようとしてやっているなどとは思わない。それでも、その『素敵な先輩』であるアリシアに呼ばれてやってくるのは、悪魔や悪霊を退治するというあのエクソシストなのである。
イメージの中のエクソシスト像といえば、聖水やら杭(くい)やらを手に、悪霊に取り憑かれて暴れ狂う『患者』を相手に戦う武道家みたいな人だった。だからこそ、
(そんなエクソシストさんが私のために来てくれるということは……も、もしかして……!?)
そう考えるだけで、身体がぶるぶるっと震え出す。
そして、そんな願わくば顔も合わせたくなかったエクソシストに、奇跡のような展開で出会ってしまった自分…
自分の目には、少なくとも穏とトレニアは怖そうな人物には見えなかった。しかし、二人はあのエクソシストだという。もしも自分が体験したことを相談して、そしてそれが悪魔や悪霊の仕業だったとしたならば、悪魔や悪霊が自分に憑いているというのも怖いけれど、それ以上にそんなモノに憑かれた自分はエクソシストにどんな仕打ちをされてしまうのか、灯里にとってはそっちの方が心配で心配で仕方がなかったのである。
「ここで会ったのもいわゆる神様の思し召しかもしれないし、よかったら今でも話を聞くよ?」
はわわと頭の中をフル回転させていた灯里のことなど知ってか知らずかのその言葉に、灯里は胸をドキリとさせる。
(穏さんもトレニアさんも、アリシアさんが呼んでくれた人達だから大丈夫…、大丈夫……)
灯里は心の中で、そう自分に言い聞かせた。
自分の体験を残らずすべて話して、万が一にも、それが悪魔や悪霊の仕業だと言われるかもしれないと思うと、話をすること自体が怖かくてたまらない。けれども、逆に、自分が見た人影のようなモノが悪魔や悪霊だとするなら、それこそ、自分のところにはもう来て欲しくないと思うし、なにより、そのような恐怖の存在がやってきている場所というのは、アリシアも勤めるARIAカンパニーなのだ。
ずっと心配してくれている大好きな先輩にも迷惑をかけたくないし、なにより嫌われてしまったらどうしようとも思っていた。そう考えると、たった今まで怖かったはずのエクソシストなのに、なんだかだんだんと隣の青年が救世主のようにも思えてきて、
「あの……!」
灯里は、思い切って口を開いたのだった。
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