青い瞳のレクイエム#04.4『その 夜の不思議な出来事は…(1)』
ARIAの二次創作小説(続き物)です。
主人公はオリジナルキャラクターですので、その点をご留意くださいませ。
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「一週間か十日くらい前だったのかな……ほんとにその日もいつもと変わらない夜でした。午前中は友達とゴンドラの練習をして、おいしいランチを食べて、午後も友達と楽しく練習して、そして今みたいに夕方になったらARIAカンパニーに帰る。帰ったら、アリシアさんやアリア社長と一緒に夕飯を食べて、いつもと変わらない…ほんとに楽しい一日だったんです。でも……」
並んで座る三人のそばを、カップルか夫婦か、誰かが楽しげに話しながら通り過ぎ、路地の奥へと消えていった。
「……でも、その日の夜のことでした。私はARIAカンパニーの屋根裏部屋に住んでいるので、自宅に帰るアリシアさんを見送って、お風呂に入って、しばらくゆっくりしていつものように寝ました。そこまではいつもどおりだったんです」
「……それで?」
「……寝て、何時ごろだったかな……ふと、夜中に目が覚めたんです。窓は閉めていたけど、なんだか寒くて。でも、一緒に目が覚めちゃったアリア社長を抱っこして、とてもあったかかったんです。だけど……」
灯里が言葉を詰まらせ、ぎゅっと目を閉じた。
これから話そうと思い返した出来事は、彼女にとってはだいぶ怖かったことなのだろう。そんな気持ちは声の調子からも感じ取れるし、なにより、その表情を見れば、普通ならもうこれ以上は聞こうとしない。それくらいに、笑顔の似合う彼女の顔は、今にも泣き出さんばかりにゆがんでいた。
しかし、穏も不思議な出来事相談を専門にするエクソシスト。依頼を受けた身としては、ある程度は話を聞かないと仕事にならない。もちろん『仕事だから』などと事務的に考えているわけではないが、何も話してもらえなければ、それこそ不安の種を解決しようとここまで来ておきながら、何も分からないまま帰るということにもなりかねないのである。
「思い出すのは怖いだろうけど、今は俺もトレニアもいるから、安心して。ゆっくりでいいから、頑張って話してみて…」
膝を抱えて、思い出したくないとばかりに目を閉じている灯里に、できる限り安心させられそうな声色を考えて、そっと、穏は話の続きを促した。
灯里はゆっくりとまぶたを上げて、水面の穏にこくりとうなづいて返す。
「……腕の中のアリア社長が、部屋の隅の方を見てたんです。だから、私も気になって見てみたら……」
「ぷいにゅ…」
二人の間に座っていたアリア社長が、灯里を見上げて心配げな声をかければ、灯里はそれに答えるようにアリア社長を膝の上に抱き上げて、ふくよかな白い体をぎゅっと抱きしめた。
「(いたんです……)」
「えっ?」
のどから精一杯に押し出された灯里の声は小さくて、穏は思わず聞き返していた。すると、まるでダムが決壊したかのように、
「部屋の隅がどこかからの光で一瞬だけ明るくなったんです。そしたらそこに見えたんです! 私のことを見てるような黒い人影が……!」
声を大にした灯里がまくし立てるように叫んだのである。
思わず力がこもってしまったのだろう、灯里に抱かれていたアリア社長が彼女の腕の中で悲鳴を上げた。
そして、そんな彼女の声には涙が混ざっていて、
「ごめんね、嫌なことを思い出させて。でも、私達がそばにいるから…」
トレニアがそっと灯里の肩に手をかけ、そう慰めの言葉をかければ、灯里は崩れるようにして彼女の胸に顔をうずめるのだった。
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