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青い瞳のレクイエム#07.3『ARIAカンパニーのだんらん(3)』

ARIAの二次創作小説(続き物)です。
主人公はオリジナルキャラクターですので、その点をご留意くださいませ。

――*――――*――――*――――*――――*――――*――――*――

 一方その頃――


「まったく……穏さん、もう少しなんとかならないのかな」
 キッチンのある事務所兼客間から階段を上がってすぐの灯里の部屋では、トレニアが旅行バッグの中をゴソゴソしながら、何やら不機嫌そうな声を灯里にぶつけていた。
 部屋は屋根裏ということもあって一見質素だが、ベッドや小物棚などの可愛らしくセンスのよい調度品が置かれており、殺風景さは全く感じさせない。むしろ、屋根裏という造りが独特の“味”を出していて、来たばかりのトレニアにも、なんとも、不思議と落ち着く温かい雰囲気を醸し出していた。
 そんな部屋の部屋主はといえば、ベッドの上に準備されていた来客用の布団セットをチェック中だ。そして、穏の何かが気に入らないような台詞のトレニアに振り向くと、彼女のそばに歩み寄ってベッドに腰掛けた。
「なんとかって…穏さんがどうかしたんですか? トレニアさん」
 トレニアも、バッグを壁際に押しやって灯里の隣にボフッと腰を下ろせば、おしゃべりの幕が切って落とされたのだった。


「だって、アリシアさんにあんなにデレデレするんだもん……態度があからさま過ぎよ」
 どうやらトレニアは、アリシアを見た時の穏のほうけようが気に入らないらしい。しかし、灯里はといえば、
「アリシアさんは、同性の私から見てもほんとにステキな人だから、仕方がないですよ~」
 と、むしろ、初対面の相手ですら見とれさせる洗練されたアリシアの美貌を褒めんばかりである。
「まあ……アリシアさんが美人なのは、悔しいけど…否定できない…かな……」
「それに~」
 言葉どおりに悔し顔のトレニアだが、灯里は何やら思い出したように含み笑った。
「それに、なに?」
「はぃ。トレニアさんは気がつきませんでした? 穏さんは私が手を取る時もすごく恥ずかしそうでしたよ?」
「あれ、そうだった?」
「うん。乗り降りのときにお客様の手を取るのはウンディーネの役目だから、手を握るのが恥ずかしいなんて、私はそんなに感じたことがなかったんですけど。でも、あんなに恥ずかしそうにされちゃうと、私も嬉しいような、なんだか気恥ずかしいような……」
 人指し指を頬に当て、灯里は困ったような笑みをこぼしていた。

「おまけに、あのボタン! もう……おいくつですか? って聞きたくなるわよ」
「あはは♪ 見事に一つ違いでしたね~」
「アリシアさんのことを気にしてるんだったら、余計おかしいよね。あんな恥ずかしい間違いは…というか、小さな子供じゃないんだから普通間違わないよ」
「あはは!」
 口をとがらせるトレニアに、灯里はおかしそうに笑う。けれども、彼女には何やら思うところがあるようで、すっと立ち上がると、階下の覗く手すりに身をもたれかけた。
「穏さん……実は、わざとだったかもしれないですよ?」
「えっ?」
 そうつぶやいた灯里に、トレニアも手すりから身を乗り出せば……
「ふふっ! アリシアさん……さっきからずっと楽しそう」
 見えるわけではないが、二階からは『……トレニアちゃんにはきつ~く……』などとアリシアの楽しげな笑い声が聞こえてくる。トレニアは、陰口とまでは思わなかったが、どう考えても自分の何かが笑い話のネタにされているように感じられて、不愉快そうに頬をふくらませた。けれども、ふと灯里の言葉を思い出したようで、嬉しそうに笑う彼女の顔を覗き込む。
「わざとって、穏さんがアリシアさんを楽しませようって、わざわざボタンを掛け違えたって言うの?」
 コクリとうなづく灯里。
「もしそうじゃなくても、アリシアさんがあんなに楽しそうだから、私は嬉しいです。だって……」
 階下の談笑に耳を澄ませるようにして、灯里は静かにまぶたを下ろした。
「私が変な影を見てから、アリシアさんにはずっと心配かけてたから……」
「灯里さん……」
「だから、穏さんがあんなにアリシアさんを笑わせてくれて、私、すごく嬉しいです!」
 その言葉どおりの嬉しそうな笑みを満面に浮かべる灯里に、
(この子、ほんっとにアリシアさん思いなんだなぁ……)
 トレニアは思わず目をまるくするのだった。


 目をつむって「ふふっ」と含み笑ったトレニアは、三歩後ずさって灯里のベッドにお尻から倒れこむ。
「わぁー…この天井の窓、いい雰囲気! 夜空がすごくきれい」
「あはっ! 明かりを消すともっときれいですよ~」
 灯里も彼女に続いて、隣にそっと仰向けになった。
「そういえば、予備のお布団、一組だけなのよね?」
「はぃ……あと一組はアリシアさんの自宅にあるそうなので、あとで持ってこれると思うんですけど……もう一組はどうしよう……」
 と、申し訳なさそうに苦笑いの灯里に、トレニアがおもむろに寝返りをうった。
「じゃあ……予備の二組はアリシアさんと穏さんに使ってもらうことにして、よかったら、私は灯里さんの布団に入れてもらえないかな」
 それはまさしくトレニアの添寝宣言だったが、灯里は大喜びで跳ねるように飛び起きる。
「はひ! トレニアさんと一緒なら私も嬉しいですぅ♪」
「よかった! ここ、夜空がすごくきれいそうなんだもん」
 そう言って二人は、互いに嬉しそうに微笑みを交し合うのだった。

 そんな中、トレニアが思い出したように言葉を続けた。
「そう、灯里さん」
「なんですか? トレニアさん」
 その灯里の台詞に合わせるように、「それ」とばかりにトレニアが灯里を指差した。
「ね、もう『さん』付けなしでいこうよ。私は灯里って呼ぶから、私のこともトレニアでいいよ」
 そう言ってウィンクしてみせるトレニアに、ますます嬉しそうな灯里だが、今度は少し恥ずかしげだ。
「うん♪ でも、えっとね……私はトレニア『ちゃん』でもいい? 呼び捨てはちょっと気恥ずかしくって……」
「うん、もちろん! これからよろしくね、灯里!」
「うん、こちらこそよろしくね、トレニアちゃん!」
「ぶーいにゅ~」
「あはっ、アリア社長もこれからよろしくお願いします!」
「ぶいにゅっ!」
「あはは♪ よかったですねぇ、アリア社長!」
 そんな和やかな雰囲気の中、アリア社長を抱えたトレニアが「そうそう、いろいろ写真持ってきたんだ」と新しい話題をきり出せば、「わーひ♪ 見せて見せて~」と灯里も目を輝かせた。

 あっという間に仲良くなった二人。そして、満を持して伝家の宝刀を抜いたトレニアだが……はてさて、誰かの心配するような写真は含まれているのか否か、気になるところである。





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