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――青い瞳のレクイエム――
イントロダクション
『その 物語の舞台は…』

ARIAの二次創作小説(続き物)です。
こちらの作品には元作品にいないキャラクターが登場します。
その点、どうぞご留意くださいませ。

―*――――*――――*――――*――――*―

 夜のとばりに包まれてしんと寝静まるネオ・ヴェネツィアの街に、ネオ・アドリア海の穏やかなさざ波の音がじんわりと染み込んでいく。見上げれば、空には無数の星たちがきらめいてまばゆい。その姿が水面に映り込めば、まるで流れ込んだ天の川の星屑で足もとに宇宙が下りてきたかのようで、そんな神秘的な様相に魅せながら、ネオ・アドリア海は今日も静かな子守唄を歌い続けていた。
 海がきらびやかかと思えば、波音に抱かれて眠る街は、光少なく真っ暗だ。街灯はもちろんついているのだが、その道しるべ以外の光はほとんどなく、せいぜい何やら夜更かしをしているらしい部屋からもれ出る薄明かりと、この街の上空にあってアクアの気候を管理し続ける『浮き島』の常夜灯ぐらい……。それらの光をひとつふたつと数え上げられるほどに、街は上下の宇宙に浮かび上がる黒いシルエットなのである。

 もう百年以上も昔の事であるのだが、人間の住めない環境だった火星は、人が生活できるように変えるテラフォーミング(惑星改造)という技術により、その呼び名を『アクア』と変えていた。
 その新しい呼び名が示すように、火星表面の九割強は水が占めるようになってしまったのであるが、このネオ・ヴェネツィアは、水没せずに残った一割弱という地表の一部にアクア移民者たちが造った街の一つであり、今ではマンホームという別称で呼ばれている地球の都市『ヴェネツィア』をモデルに建造されている。新しいヴェネツィア、だから“ネオ”ヴェネツィアと、つまりそういう訳である。
 ネオ・ヴェネツィアは、街としての形を成し始めた初期の頃こそ今ほどの賑わいはなかったのであるが、この街にはマンホームとアクアをつなぐ宇宙港がおかれ、アクアの玄関街を担ったことも手伝って、地球の都市・ヴェネツィアがそうであったように、現在のような、観光客が集まるアクアの代表的な観光都市として成長を遂げることとなったのであった。

 そして……。

 

 ――ウンディーネ――

 

 ネオ・ヴェネツィアにおいて、この言葉を知らない者は、もはや存在しないだろう。ネオ・ヴェネツィアだけではなく、アクアに興味を抱く者であれば一度は耳にする職業の名前である。
 各社それぞれの、鮮やかな色彩で紋様を施された純白の装束をその身にまとい、颯爽と風を切る水上の妖精。旅行者たちのネオ・ヴェネツィア観光を、より幸せなひとときに染め上げる麗しき水先案内人。彼女たちの操るゴンドラは、日々、このネオ・ヴェネツィアで運行され、そして、ネオ・ヴェネツィアを訪れた旅行者たちのその心に、忘れられない素敵な思い出を織り込み続けているのである。

 そしてここでも、素敵な思い出と新たな未来を織る準備が整いつつあるようだ。

 立派なウンディーネになることを夢見て、日々練習に励む一人の少女。その少女を教え導きながら、日々の生活を笑顔で彩るたった一人の先輩ウンディーネ。それに、社長の威厳がそのおなかに表れた一匹の猫。この二人と一匹で運営される小さな水先案内会社。そして、優しい水のきらめきに包まれたネオ・ヴェネツィアがこの物語の舞台。修行に励むそのウンディーネの少女が、今までにない不思議な出来事を体験をするところから、この物語の幕は上がる。
 その不思議な出来事を解決しようと派遣された二人の青年男女を物語の中心に、それを取り巻くネオ・ヴェネツィアの仲間たち。それぞれに様々な想いを心に描きながら、物語はどう進んでいくのだろうか。それは、まだ誰も知らない……。

 

 そう、この物語の幕は、まだ上がったばかりなのだから……

最終更新日: '11/05/20
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